裸の少年 松田丈志 BL小説
「いえ、特に何も」。
照れくさいのか、敦行はやや乱暴な口調でそう言って両手で夏彦の頬をぐいと挟む。再びトオルは時計に向き直り、待ちきれなさそうにその脇(わき)にある電話に手を伸ばした。「おいしくない…とか?」。「こっ恥ずかしいことを訊くな! だから、き…キキ、キスじゃねぇか! そんなこともわからないのか、このド阿呆ッ!」。モトキは顔を近づけてきて、いきなり真昼の唇を奪った。「久しぶりに旨いのがあったから、そういう気分だった。台無しだ」。
小首を傾(かし)げながら三枝が答えると、「そうか」。ギラギラと照りつけていた真夏の太陽が、徐々に高さを増してビルの真上に消えると、会議室に差し込んでいた陽射(ひざ)しが遠ざかり、テーブルを囲んだ面々からホッとしたため息がもれた。
「いたた、ドンちゃん爪立てるなって」。情熱的な夜以外、名前を呼ばれたことなどないので、京介は驚いたようだ。「悪くないさ。……俺もそう思ってる」。だけど仕事でご一緒すると決まったからには、当然周囲だってふたりの動向に注目するし、実際すでに、三面記事的なネタにもされている。
黒々した髪を後ろに撫でつけ、仕立ての良さそうなダークグレーのスーツに身を包んでいるが……男の発する雰囲気は、どう見ても堅気ではなさそうだ。たとえ男同士であっても、飯島が好きだからこそくちづけを交わすのも、その腕に抱かれるのも厭(いと)わないし、一緒(いつしよ)に暮らすことにも同意した。「……」。きつめの口調で咎(とが)めるようにいわれると、こっちが悪いことをしている気分になってしまい、反論すらできず俯(うつむ)いて。「そうはいうけど、明日は苦手な古文だからさ。気合い入れて、さらっておかねぇとヤバ……い…」。長森も急に目を開けた慶斗に少し驚いたようだった。専攻していた彫刻(ちようこく)を制作することで楽に暮らせるほどにはまだまだ至らず、週の三日を近くの美術学校で講師として絵を教え、それ以外の時間を自分の彫刻の制作に費(つい)やしていた。
泰昭が残したウィスキーを飲もうと、水穂はグラスを持ち上げた。
ボーイズラブ小説作品紹介
ヨーロッパ小国の大公殿下・理央と教育係のルシエルは秘密の恋人同士☆日本で育ったため、「オマケの王子」と言われる事も多く、ま